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伝統維新家対談

京都人の本物を見極める厳しい目がお店を育ててくれる。

   今の着物に足りないのはファッションとしての提案。

中西 斉藤さんは、今の日本女性に対して、着物をどう楽しんでほしいとお考えです?

斉藤 「着物は好きですか?」って女性にアンケートを取ると、100人中90人くらいは
    好きと答えますが、着る人は少ないですよね。では、なぜ着ないかというと、
    ひとりでは着れないとか、着て行く場所がないとか、20年前からずっと同じ結果
    なんです。
    でも、僕が考えるに、単純に着たい着物がないから着ないと思うんですよね。
    今ある着物って、どれも代わり映えはしない。独身なのに着ると若奥さんのように
    所帯じみて見えたり。エレガントさが足りないんです。

中西 それに比べて斉藤さんの作品は、和の伝統的な要素にファッション的な手法を
    取り入れているのが特長ですね。初めてじっくり見ましたが、着物業界に新風を
    巻き起こしたお父さんの三才さんに負けず劣らずの出来栄えで感動しました。

斉藤 新作はコレクション形式で発表しています。東コレには毎年出させてもらっていて。
    美術館や画廊で展示するのは僕の仕事じゃない。「私の晴れの日に着たいな」と
    思わせることが大切で、要するに“着物を楽しむスタイルの提案”ですね。

中西 そうですか。でも、こんなにモダンな着物なのに、どことなく奥ゆかしさ
    というか京都っぽさもにじみ出ていますね。

斉藤 意識していませんが、よくそう言われます。バラとか洋風の柄を使っても一緒。
    最終的には京都のにおいがするバラに仕上がるし。こればかりは仕方がない(笑)。

中西 よくわかります。僕はスーツの仕事をしているから、頻繁にイタリアに行っていました。    でも、いくら一生懸命作っても完璧なイタリアのスーツにはならない。
    極論を言えばイタリア人ではないからでしょうなぁ。あの国で毎日パスタ食べて
    イタリアワイン飲まないと、あの味を出すのは無理(笑)。
    だから僕、京都人で良かったと思っているんです。

    比叡山や加茂川とか京都には素晴らしい景観がいくつもあって、そんなわびさびの
    ある環境や文化の中で育ったから、自然と物づくりに“京都人”が味として
    出るんじゃないかな。
 
斉藤 そうですね。普段日本でやっていることが海外に行くと非常識になるのと一緒で、
    僕がやっていることは京都にいたら割と普通なんですけど、海外の人はすごく
    喜んでくれる。
    実は、今度イタリアの某自動車メーカーとコラボする計画もあるんですよ。

中西 それは素晴らしい!

   京都だからこそ生まれる本物のオリジナリティ。

斉藤 京都の物づくりの良さは、ほかではできない技術と、手間なことを手間と      
    思わずやれること。自分にしか作れない一点ものを作り続けることが生涯の
    仕事だと思っています。

中西 京都で長年商売させてもらっていますが、お客さんが僕をここまで育てて
    くれました。
    京都の人の評価基準がしっかりしているからこそ本物の修行ができて良かったと
    思っています。当社で提唱している「京都アルティズム」ですが、京都の職人が
    持っている気質やエッセンスを取り入れながらも買いやすい値段で商品を
    提供するために工業化をしています。それで、より多くの方に愛される服作りが
    できればと。

斉藤 実は、20代の頃にレディースのブランドをやっていましたが、オンリーさんが
     良いスーツを驚くような値段で売っていて、かなり衝撃を受けましたよ。

中西 レディースのデザインをしていたんですか!? 実は当社でも女性向けに
    「男仕立て」のスーツを作っているんですよ。斉藤さん、もしよろしければ
    一緒にどうですか……?

斉藤 僕でお役に立てることならぜひぜひ(笑)。

中西 いやぁー、これは面白いことがいろいろとできそうですな(笑)。

対談のお二人